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読了 : 『ビラヴド』 – トニ・モリスン

投稿日:2019年1月3日 更新日:

はじめに

雑食青年です。今回はノーベル文学賞作家トニ・モリスンの名作、『ビラヴド』です。

『ビラヴド』

作者: トニ・モリスン (1931-)

出身国: アメリカ

発行年: 1988年

あらすじ

第1部 – 現在

舞台は奴隷解放が始まっていた1850年前後のアメリカはオハイオ。黒人女性のセサは娘のデンヴァーと義母であるベビー・サッグスと一緒に、の怨念が渦巻く「開拓地」の一二四番地で暮らしてた。セサの息子二人は赤ん坊の怨念に耐えかねて家を出ていた。

一二四番地は悪意に満ちていた。赤ん坊の恨みがこもっていた。

ある日、かつて「スイート・ホーム」農場で一緒に働いていたポール・Dが18年ぶりに姿を見せる。彼らはその日のうちに結ばれ、一緒に暮らすことになったポール・Dが赤ん坊の霊を追い出す。18年ぶりに平穏が訪れた家に突然謎の女が現れる。彼女のは「ビラヴド」、18年前に亡くなった娘の墓に刻んだ一文と同じであった。

清掃した女が、水の中から上がってきた。乾いた川土手にたどり着くかつかないうちに、座り込み、桑の木に寄りかかった。まる一昼夜そこに座ったまま、頭をがっくり幹にもたせかけていたので、麦わら帽子の縁が折れて破れていた。

ビラヴドはセサからの愛を独占することをただ一つの目的として家にやってきた。ビラヴドが娘にしか歌っていない歌を歌っていることから自分の娘であることに気づく。やがてポール・Dとセサの間にまで割って入るようになり、セサはビラヴドが殺した赤子の怨霊を告白し、ポール・Dを家から出る。

むかし奴隷だった女が、何かをこれほど愛しているのは危険なことだった。しかも愛しぬこうと決めたのが我が子だったとしたら、なおさら危険だった。いちばん賢いやり方は、ほんの少しだけ愛しておくことだ、と彼は経験から知っていた。あらゆることを、ほんの少しだけ愛しておくのだ。そうしておけば、奴らが愛しいものの背中をへし折ったり、南京袋に押し込んだりするようなことがあっても、ひょっとしたら、まだ次に何かをいとおしむ、ほんのわずかな愛が残るかもしれないのだ。

第2部 -過去「スイート・ホーム」

少女であったセサは「スイート・ホーム」農場に買い取られ、そこでハーレと結婚する。彼は時間外労働で母であるベビー・サッグスを奴隷から解放する。その後、「スイート・ホーム」農場に「先生」と呼ばれる白人がやってくる。彼は新しい農場主として、「スイート・ホーム」農場に暴力と差別をもたらす。セサはハーレの目の前で性的暴力を振るわれ、ハーレは廃人となる。

白人種は、外見はどうであろうとも、黒人であれば、その皮膚の下にはかならずジャングルが潜んでいると信じていた。〜白い肌をした人々が黒人の心の中に種を蒔いたジャングルだった。そして、ジャングルは育った。

やがて、黒人たちはスタンプ・ペイドやシックソウを中心に脱走計画を考え始める。その頃、セサは赤ん坊を生んでおり、また赤ん坊を身ごもっていた。脱走した黒人たちのほとんどは逃亡に失敗するが、身重のセサは白人の女性エイミー・デンヴァーに助けられ、逃亡に成功し「開拓地」の一二四番地のベイビー・サッグスと一緒に住む。ベイビー・サッグスは「開拓地」で黒人のリーダーとして皆を導いていた。しかし、「スイート・ホーム」農場の追っ手が一二四番地にたどり着き、我が子に同じ苦痛を味わせたくないセサは「もうはいはいしてんの子」の首を鋸で切る。デンヴァーにも手をかけようとしたとき、スタンプ・ペイドがデンヴァーを救い、セサは警察に捕らえられる。この事件を見た「スイート・ホーム」農場の追っ手は誰も連れ戻すことなく農場に帰る。セサは牢獄に送られ、この事件以降一二四番地のベイビー・サッグスとセサには誰も寄り付かなくなる。出所したセサは体を売ることを引き換えに、黒人の男に「もうはいはいしてんの子」の墓跡に「BELOVED」(ビラヴド)と彫ってもらう。

濃すぎるって、あの人は言った。私の愛は濃すぎるって。あの人が愛の何を知っているっていうの?あの人はいったい誰かのために喜んで死ねるっていうの?墓石に銘を掘ってもらうのに、赤の他人に自分の性器を自由にさせることができるっていうの?

第3部 – 現在

ビラヴドからの愛と奉仕の要求は次第に過激になっていき、セサはその身を滅ぼしかけている。彼女救うため、デンヴァーは混血女性レディ・ジョーンズを中心に「開拓地」の人々に助けを求める。デンヴァーは家にある服を着て外に出るが、まるで娼婦のような格好になった。セサが働いていると言っていた食肉工場は、すぐ裏に働いてきた黒人を誘う立ちんぼの集まりがあり、セサは食肉工場だけでなく身を売って働いていたことが明らかになる。

「開拓地」の黒人女性が一二四番地へ向かい、セサのために祈り、叫んだ。セサは正気を取り戻し、彼女たちの元へ戻るためにビラヴドを置いて家を出た。ビラヴドは消え、ポール・Dは再びセサと一緒に暮らし始める。

おまえとおれ、おれたち二人は誰よりも、たくさんの機能を背負っている。俺たちにだって明日はいるんだ。

 

揺すってやれる寂しさがある。

 

人から人へ伝える物語ではなかった。

 

時がたてば、痕跡は残らず消えていく。忘れらていくのは足跡だけではなく、水も、それから水の中の風景も。後に残るのは天候。思い出されず説明されずにいるものの息ではなく、軒端をかする風か、すばやく溶けていく春の氷の気配。気候だけ。もちろんキスをせがむ騒々しい声もない。

ビラヴド。

 

解説

トニ・モリスン著『ビラヴド』 : 崇高なる母性 <書評>

文化学園大学のリポジトリに書評の寄稿がありました。

http://dspace.bunka.ac.jp/dspace/bitstream/10457/2708/1/001032103_17.pdf

こ の作品を通して我々が理解しなければならないことは, セス の子殺しが許されるべきであるか どうか, ということではなく, 黒人が意思をもつことも, 愛を 注ぐことも禁じられた暗黒 の時代 の 中で, 子供への愛を貫くためには手をかけざるを得なかった, というそのただ 1 点な のだ。

マーガレット・ガーナー

1856年、オハイオ州で逃亡した奴隷であるマーガレット・ガーナーは娘を奴隷に戻さないために殺害した。これは実際に起きた事件であり、『ビラヴド』の元になった事件でもある。

 

細かいことはさておき

ただただ重い物語でした。ただ、「人から人へ伝えられる物語ではなかった」通り、黒人差別があったということを、人種差別に疎い僕ら日本人も忘れないようにしないといけません。女性差別もしかりです。

 

雑食青年

 

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